Webサイトを開いたとき、「ページが表示されるまで時間がかかる」と感じることがあります。こうした場面では回線速度やWi-Fiだけでなく、DNSによる名前解決も通信の流れに関係しています。

ただし、「DNSを変更すればインターネットが速くなる」と単純に考えるのは避ける必要があります。DNSが主に関係するのは、ドメイン名から通信先を確認する名前解決の部分だからです。

この記事では、DNSの基本的な仕組みとWeb表示速度との関係を整理し、インターネットが遅いと感じたときの確認ポイントを解説します。DNSと回線速度の違いを理解し、原因を切り分けていきましょう。

DNSとは?Webサイトを表示するまでの仕組み

DNSは「Domain Name System」の略称で、ドメイン名とIPアドレスを対応付ける仕組みです。Webサイトへアクセスするときには、このDNSによる名前解決が通信の一部として行われます。DNSがインターネットでどのような役割を持っているのか、名前解決とキャッシュの仕組みから整理しましょう。

DNSはドメイン名とIPアドレスを対応付ける

Webサイトには「example.com」のような、人が扱いやすいドメイン名があります。一方、インターネット上の通信では、通信相手を特定するためにIPアドレスが利用されます。

DNSは、入力したドメイン名に対応するIPアドレスなどの情報を調べる役割を持っています。この処理が「名前解決」です。

そのため、ブラウザへURLを入力してWebサイトへアクセスするときには、必要に応じてDNSによる名前解決が行われ、その情報をもとに通信先へ接続します。

名前解決では複数のDNSサーバーが関係する

DNSでは、世界中のドメイン情報を一つのサーバーだけで管理しているわけではありません。情報は階層的に分散して管理されています。

端末から名前解決を依頼されたキャッシュDNSサーバーは、必要な情報を保持していなければ、DNSの階層をたどって目的のドメイン名に対応する情報を取得します。

ただし、利用者のパソコンやスマートフォンが、WebサイトへアクセスするたびにすべてのDNSサーバーへ直接問い合わせるわけではありません。DNSの速度を考える際は、この名前解決の流れを理解しておくことが大切です。

DNSキャッシュによって問い合わせを減らせる

DNSには、一度取得した名前解決の結果を一定期間保存して再利用する「キャッシュ」の仕組みがあります。

利用できるキャッシュが残っていれば、同じ情報を得るために毎回DNSの階層を最初からたどる必要はありません。DNSキャッシュは、名前解決に必要な問い合わせを減らすために利用されています。

そのため、「Webサイトへアクセスするたびに、必ずすべてのDNSサーバーへ順番に問い合わせている」という理解は適切ではありません。DNSによるWeb表示への影響を考えるときは、キャッシュの存在も含めて整理しましょう。

DNSはインターネットやWeb表示を遅くする?

DNSによる名前解決はWebアクセスの流れに含まれるため、その応答状況がページ表示を開始するまでの時間に関係する場合があります。

一方、DNSはインターネット回線そのものの通信速度を決める仕組みではありません。「DNSの名前解決に時間がかかる状態」と「回線のデータ転送が遅い状態」を分けて考えることが重要です。

DNSの応答に時間がかかると表示開始に影響する場合がある

ブラウザがドメイン名から通信先を確認する必要がある場合、名前解決で必要な情報を取得してからWebサーバーとの通信へ進みます。

そのため、DNSへの問い合わせや応答に問題が生じていれば、Webサイトとの通信を開始するまでに時間がかかる可能性があります。

ただし、ページ表示にはDNS以外にも、Webサーバーからの応答や通信経路、画像などのデータ取得、端末側の処理といった複数の要素が関係します。「Webサイトの表示が遅い」という症状だけで、DNSが原因だと判断することはできません。

DNSを変更しても回線速度そのものが上がるとは限らない

DNSについて調べると、利用するDNSサーバーを変更する方法が紹介されることがあります。しかし、DNSサーバーを変更したからといって、契約している光回線やWi-Fiの通信性能そのものが向上するわけではありません。

DNSが関係するのは、主にドメイン名から通信先の情報を得る名前解決です。大容量ファイルの転送など、通信開始後のデータ転送速度とは切り分けて考える必要があります。

インターネット全体が遅い場合はDNSだけに原因を絞らず、回線や自宅のネットワーク環境も確認しましょう。「インターネット回線を高速化する方法を解説!遅さの原因を知りネット環境を整える」では、通信速度が遅いときに確認したいポイントを整理しています。

パブリックDNSへ変えれば必ず速くなるわけではない

誰でも利用できるDNSサービスとして、「パブリックDNS」と呼ばれるものがあります。利用環境によっては、DNSサーバーを変更することで名前解決の応答状況が変化する可能性があります。

しかし、特定のパブリックDNSへ変更すれば、すべての環境でWeb表示が速くなるとは限りません。DNSサーバーまでの通信経路や利用時のネットワーク環境などによって、結果が異なる可能性があるためです。

【DNSが関係しているか確認するテンプレート】

  1. 特定のWebサイトだけ遅いか確認する
  2. 複数のWebサイトでも同じ症状が出るか確認する
  3. 別の端末でも同じ状態になるか確認する
  4. Wi-Fiと有線接続で違いがあるか確認する
  5. DNS以外の通信環境もあわせて確認する

DNSの変更を最初の対策にするのではなく、「どの操作で、どのように遅いのか」を整理してから原因を切り分けることが大切です。

DNSが原因か確認するときのポイント

Webサイトの表示が遅いときは、すぐにDNSの設定を変更するのではなく、症状を切り分けて確認することが大切です。DNS以外にも、Wi-Fiや回線、端末、アクセス先のWebサイトなどが関係している可能性があります。どの場面で遅さを感じるのかを整理し、DNSが関係している可能性を順番に確認しましょう。

特定のサイトだけ遅いのかを確認する

最初に、表示が遅いのが特定のWebサイトだけなのか、複数のWebサイトで発生しているのかを確認します。特定のサイトだけで症状が発生する場合は、アクセス先のWebサーバーやコンテンツなどが関係している可能性もあります。

一方、複数のサイトで同じような症状が続く場合は、自宅側の通信環境やDNSを含めて確認する余地があります。また、「ページを開き始めるまで時間がかかる」のか、「表示が始まった後も画像などの読み込みが遅い」のかも確認しましょう。症状を具体的に整理すると、名前解決とデータ転送のどちらを確認すべきか判断しやすくなります。

別の端末や接続方法でも症状を確認する

パソコンでWeb表示が遅い場合は、同じネットワークに接続しているスマートフォンなどでも症状が発生するか確認します。一つの端末だけで問題が起きている場合は、その端末の設定やブラウザなどが関係している可能性があります。複数の端末で同じ症状が出る場合は、ルーターや回線側なども含めて原因を切り分けます。

Wi-Fiを利用している場合は、可能であれば接続方法による違いも確認するとよいでしょう。Wi-Fi側に原因がある場合、DNS設定を変更しても問題そのものを解消できない可能性があります。

Wi-Fiの通信状態も確認したい場合は、「Wi-Fiルーターの置き場所で速度は変わる!原因と改善方法を解説」で、設置環境による影響を確認できます。

DNSを変更する前に現在の設定を記録する

DNSサーバーの設定を変更して比較する場合は、変更前の状態を記録しておきましょう。現在利用しているDNSの設定や、自動取得になっているかなどを確認してから変更します。

設定方法は、端末やルーター、利用しているサービスによって異なります。操作する場合は、利用中の機器やサービスの公式案内を確認することが大切です。

変更後は、変更前とできるだけ近い条件でWebサイトの表示状態を確認します。一度だけの結果で判断せず、DNS以外の条件が変わっていないかも確認しましょう。

【DNS変更前後の確認テンプレート】

変更前のDNS設定
確認したWebサイト
使用した端末
Wi-Fi・有線などの接続方法
変更前の表示状態
変更後の表示状態
ほかのサイトでの変化
元の設定へ戻すための情報

設定変更によって改善したように見えても、それだけでDNSが唯一の原因だったとは断定できません。通信状態は利用環境などでも変化する可能性があるため、できるだけ条件をそろえて比較することがポイントです。

まとめ

DNSは、ドメイン名とIPアドレスを対応付け、Webサイトなどへのアクセスに必要な名前解決を行う仕組みです。名前解決の応答状況によっては、Webサイトとの通信を開始するまでの時間に影響する場合があります。

ただし、DNSを変更すればインターネット回線そのものが高速化するわけではありません。Web表示にはDNSだけでなく、Wi-Fiや回線、端末、通信経路、アクセス先のWebサイトなど複数の要素が関係します。

Webサイトの表示が遅いと感じたら、まず特定のサイトだけで発生するのか、複数端末でも同じなのかを確認しましょう。そのうえでDNSが関係している可能性を切り分け、設定を変更する場合は現在の状態を記録してから比較することが大切です。